会長挨拶
第19回日本創傷外科学会総会・学術集会
会長 小川 令
(日本医科大学形成外科学教室 主任教授)

この度、第19回日本創傷外科学会総会・学術集会を、2027年7月22日(木)・23日(金)の2日間にわたり、イイノホール&カンファレンスセンター(東京)にて開催させていただきます。このような歴史ある学術集会の会長を拝命し、大変光栄に存じます。
日本創傷外科学会は2008年に、創傷外科という形成外科の根幹をなす領域をさらに発展させることを目的として設立されました。設立当初は数百名規模の学会でしたが、現在では1,700名を超える会員を擁する学会へと成長し、創傷治療・創傷外科に関する我が国を代表する学術集会として発展を続けています。
今回の学会テーマは 「Beyond Healing ― 真の創傷治癒をめざして ―」 といたしました。創を治すだけではなく、創があったことさえ感じさせない未来の創傷治癒について、皆様と考えたいと思います。
創傷治療は、この数十年で目覚ましい進歩を遂げました。感染制御、創傷被覆材、局所陰圧閉鎖療法、再生医療、マイクロサージャリーなど、多くの新しい技術によって、従来は治療が困難であった創傷に対しても良好な治癒が得られるようになり、治療成績は飛躍的に向上しています。しかし、私たちが現在達成できている創傷治癒の多くは、「傷跡をできるだけ目立たなくする治癒」、すなわち Less-Scar Wound Healing に過ぎません。
人の皮膚は、胎児期には瘢痕を残さずに治癒することが知られています。一方、成人では、どれほど丁寧な手術を行っても、多くの場合は瘢痕形成を避けることはできません。私たち創傷外科医が目指す究極の目標は、単に創を閉鎖することではなく、受傷前と同じ構造・機能・外観を取り戻す Scarless Wound Healing を実現することにあります。
もちろん、その道のりは決して平坦ではありません。炎症・線維化制御、免疫学、幹細胞、生体材料、メカノバイオロジー、AI、ロボティクスなど、多くの基礎研究の成果を臨床へと橋渡ししていく必要があります。一方で、その未来を実現するためには、現在の臨床技術を一つひとつ磨き続けることも同じくらい重要です。適切なデブリードマン、血流を考慮した再建、創閉鎖技術、感染管理、創傷管理の工夫など、日々の積み重ねこそが未来への礎になります。
本学術集会では、基礎研究から最先端の臨床研究、さらには日常診療ですぐに役立つ手術手技や創管理の工夫まで、幅広い演題を通じて議論を深めたいと考えています。「今できること」を磨きながら、「将来できるようになること」を見据える、その両者をつなぐ学術集会となることを願っています。
海外招待講演はHarvard Medical SchoolのDennis Orgill教授に御願いをいたしました。人工真皮「Integra」の開発や、陰圧閉鎖療法の作用機序の解明など、創傷外科の発展に多大な貢献をされてきたご経験と、その研究と臨床の歩みについてご講演いただく予定です。
創傷外科は、形成外科のみならず、循環器内科、血管外科、整形外科、皮膚科、救急科、看護、リハビリテーション、基礎医学、工学など、多くの分野との連携によって発展していく学問です。職種や専門領域を越えて活発な議論が交わされ、新たな共同研究や臨床応用につながる場となれば幸いです。
会場となるイイノホールは東京の中心部に位置し、交通アクセスにも恵まれています。本学術集会が、「Beyond Healing」というテーマのもと、創傷治癒のその先を考え、未来の創傷外科を切り拓く契機となれば幸いです。皆様からの多数の演題応募とご参加を心よりお待ち申し上げます。
